日時:2006年5月26日 17:30〜19:45
場所:損保ジャパン総合研究所 会議室 |
|
金融・保険の融合に関する研究会 第4回会合議事要旨 |
 |
(1)報告「『金融・保険の融合に関する研究会』中間報告 金融コングロマリットの事例研究に基づいて −論点の検討」(損保ジャパン総合研究所) |
 |
1、中間報告のとりまとめと主な論点について |
- 前回までに取り上げた4つの金融コングロマリット事例―ING(1991年誕生)、シティグループ(1998年誕生)、ロイズTSB(2000年スコティッシュ・ウィドウズ買収)、アリアンツ(2001年ドレスナー銀行買収)―について中間報告をとりまとめる予定。
- 中間報告に盛り込む主な論点について事務局案を作成したので、本日はこれに基づく議論をお願いしたい。論点は、リテール分野に焦点を当て、また金融コングロマリットと外部との相互作用に着目して絞り込んでいる。
|
 |
2、金融コングロマリット化の狙いと背景 |
- 4つの事例において、金融コングロマリット化の狙いで特に重要な要素は、「業態を越えるクロスセル関連」と「市場競争環境の変化―M&A関連」の2つに集約できるのではないか。
- 「業態を越えるクロスセル関連」の背景には、1980年代以降の投資信託、貯蓄性保険商品、年金市場等の拡大、預金、保障性の高い保険商品等の相対的地位低下等に伴う顧客ニーズの変化があった。
- 「市場競争環境の変化―M&A関連」の背景には、80年代後半以降における欧州市場統合の進展、競争のグローバル化という流れがあり、金融・保険業界それぞれの業態内でM&Aによる統合が活発化し、業態を越える統合もいくつか出てくるようになった。例えば、INGの場合には、欧州市場統合をにらんで国境を越えるM&Aが活発化する中で、他社からの買収を防ぎ、さらなるグローバル展開を図るためにも、規模、資本の拡大が必要と考えられ、1991年の合併による金融コングロマリット形成となった。
- 金融コングロマリット形成の背景としては、規制緩和も重要である。イギリス、ドイツでは、ロイズTSB(2000年)、アリアンツ(2001年)による買収が行なわれるかなり以前から規制上は金融コングロマリットの形成が可能だったが、ING(オランダ)とシティグループ(米国)のケースでは規制緩和により金融コングロマリット化が可能となった。
- 以上の他、経済のグローバル化、IT革新、金融技術革新等も重要な背景であることも間違いない。
- 金融コングロマリットは、概して、業態を越えたクロスセル、特に銀行店舗による保険商品の販売に注力している。このようなクロスセルを行なうだけであれば、資本結合を伴わない販売提携だけでも可能である。4つの事例では、それぞれに金融コングロマリット化を選んだ独自の理由があった。金融コングロマリット化か販売提携かの選択では、共通ブランドの活用(金融コングロマリット化の場合)等も重要な要素の1つと考えられるが、究極的には、資本効率がカギになっているのではないか。
|
 |
3、金融コングロマリット化に対する外部の反応(評価)・内部の課題 |
- 金融コングロマリットによるクロスセル(銀行による保険商品の販売)が、顧客ニーズに応えているのかどうかについては、事例により評価が分かれている。このような違いは、販売する保険商品の性格の違い、銀行支店での売り方、顧客が銀行に対しどれほどの信頼感を持っているか、といった要素に起因していると考えられる。
- 株主・投資家は、概して、複雑でわかりにくい金融コングロマリットの将来性について肯定的な評価をしていない。
- 規制・監督当局にとっては、金融コングロマリットの形成に伴い、新たな課題が生じている。特にシステミックリスク回避の観点から、複雑化した金融コングロマリットの実態をいかに正確に評価するかというところに大きな関心がある。
- 金融コングロマリット内部の課題で特に重要な点は、複雑さの低減をいかに図るかということであり、様々な取組みが行われている。
|
 |
4、保険と銀行との大規模な金融コングロマリット化は今後大きな流れになり得るか |
- 金融コングロマリット化は、今後も金融機関にとって、内部環境と外部環境から導き出される選択肢の1つであることに変わりないものの、外部との相互作用(顧客ニーズ、株主・投資家、規制・監督当局等の反応)の観点から見ても、金融コングロマリット化を促すような大きなドライバーは見当たらない。したがって、当面は、保険と銀行との大規模な金融コングロマリット化は、大きな流れにはならないのではないか。
|
 |
(2)自由討議 |
 |
〔「金融コングロマリット化の狙いと背景」について〕 |
- ブランドの独占的使用、ブランドの共通化といった、ブランドの活用が金融コングロマリット化のモチベーションの一つになっていると考えている。この点についても言及してもらいたい。
- 「M&Aの活発化」を金融コングロマリット化の一因として挙げているが、金融コングロマリット化の手段としてM&Aが使われているのであり、むしろここでは、M&A活発化の背景にある、グローバル競争の激化、スピード経営が求められるようになってきた等の市場競争環境の変化について重点的に取り上げるべきではないか。
|
 |
〔「金融コングロマリット化に対する外部の反応(評価)・内部の課題」について〕 |
- 銀行業と比較して保険事業のリターンが低いことが、シティグループの保険部門売却の要因と結論付けているが、本当にそうなのだろうか。長期的に保険事業の期待リターンが銀行業よりも低いというようなことがあれば、逆に保険会社が銀行業を買収する動きが見られるはずであるが、現実にはそのような現象は起きていない。
- 一時期、ワンストップ・ショッピングという概念がもてはやされ、いわば一種の流行のような流れの中で銀行商品と保険商品を同時に売ってみたけれど、やはり銀行商品と保険商品とは全く違うものだったという解釈もあり得ると思う。
- そもそも保険商品の中でも、個人向け商品は競合性が強く、超過リターンを得ることはできない。(銀行業から保険業へ)進出してみたものの、この分野ではリターンを得ることはできなかったということではないのか。
- 保険事業は、一般的に販売チャネルの独立性が強く、垂直統合度が低いとされている。これは、保険事業または商品の特性によるものだと考えられており、この事業の垂直統合度の相違の要因となっているものが、金融コングロマリットの成否に影響を与える一因にもなっているのではないかと思われる。
- 保険商品は、(商品によっても相違はあるが)販売過程において説得に長時間を要するものであり、これが販売チャネルの独立性を強めた一つの要因であるとされている。事例によって、銀行窓口での保険販売の成否に差が生じているのは、従来、その銀行が窓口においてどのような機能を果たしてきたか、すなわち、銀行窓口が説得に時間を割くという販売スタイルに慣れていたか、知識・経験を有していたかというところにあるのではないかと考えている。
- 金融コングロマリット化による効果としてリスク分散がある。一部で、巨大になることによりリスクが集中するという議論もあるが、基本的にはそうではない。
- 金融コングロマリットが、異なる事業分野において、同種のリスクを取ってしまうことによるリスク集中もあり得る。規制は、この点に注目している。
|
 |
〔その他(論点として追加すべき点など)〕 |
- 規制があって分離されていたから金融コングロマリットという概念が生まれた。全く規制がない環境であれば、企業として最適なキャッシュフロー、事業ポートフォリオの組み合わせは何か、という問いの中で、銀行、保険の組み合わせはどうなのかを考える必要があると思う。金融コングロマリットという概念自体に違和感がある。
- 保険のリテール分野、特に生命保険分野に焦点を当てた内容となっている。ホールセール分野にまで視野を広げると議論が変わってくるかも知れない。リテール分野に焦点を当てた上で導き出された結論は何を意味しているのか。
- 金融コングロマリット、特にリテール分野の議論を行うためには、投資信託の発展の影響も大きいと考えられ、投資信託の位置付けについても触れてもらいたい。
|
以上 |