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T.本稿の目的と構成
本稿は、米国の企業における健康増進・疾病予防の取り組みについて、ディジーズ・マネジメントとウェルネス・プログラムを中心に、その沿革を概観した上で、近年の動向を紹介するものである。
U.米国の企業における健康増進・疾病予防の沿革 - 企業の目的の変化に焦点を当てて -
米国では、1960年代に労働災害の件数が大きく増加したため、企業において、従業員の業務上の怪我、疾病および死亡の予防、職場環境の安全性の向上を目的とした安全性向上プログラムが実施されるようになった。安全性向上プログラムは、現在米国の企業で実施されている健康増進・疾病予防の取り組みの源流の1つである。同じ時期に、一部の大手企業では、従業員の生産性向上を目的とし、フィットネスを中心とした健康増進・疾病予防に関するプログラムを実施するようになっていた。さらに、1980年代には、より多くの企業が従業員の健康増進・疾病予防に取り組むようになるとともに、提供するメニューも多様化していった。また、1980年代に入ると、医療費の増加に伴う企業の健康保険料等の負担の増大が企業収益を圧迫するようになったことから、健康増進・疾病予防の取り組みは、医療費増加の抑制対策としての側面が強く意識されるようになった。1990年代後半には、医療費増加の抑制を実現するための一つの試みとして、慢性疾患患者を対象として重症化を予防する取り組みであるディジーズ・マネ ジメント・プログラムが誕生し、発展した。
V.ウェルネス・プログラムの最近の動向
2000年代後半に入ると、健康増進・疾病予防の取り組みの中でも、健康的な個人をも対象として健康維持・増進を図る取り組みが「ウェルネス・プログラム」と呼ばれて大きな関心を集め、多くの企業が導入するようになった。2010年の調査によると、従業員200名以上で少なくとも一つ以上のウェルネス・プログラムを導入している企業は92%に達している。近年になってウェルネス・プログラムに関心が集まっているのは、医療費増加の抑制に関して、ウェルネス・プログラムの効果への期待がいくつかの研究成果を踏まえて企業の間で高まっていることによる。また、ウェルネス・プログラムが企業に与える効果として、従業員の生産性の向上、従業員満足の向上といった点に注目する企業が増加していることが挙げられる。
W.ディジーズ・マネジメントの効果が問題となった事例と最近の動向
2000年代後半になると、高齢者向け公的医療保障制度におけるディジーズ・マネジメントの実験プログラムが期待されていた成果をあげられなかったなど、その効果が問題となる事例がいくつか生じた。ディジーズ・マネジメントを提供する事業者の間では、こうした状況も踏まえて、効果測定の精緻化に向けた取り組みや、ディジーズ・マネジメントを統合的な健康増進・疾病予防の取り組みの中に位置づける手法が提唱されるなどの新たな動きが見られる。
X.おわりに
ディジーズ・マネジメントに関しては、その効果について議論が続けられる中で、その手法、実施のあり方は今後も変遷していくものと考えられる。ウェルネス・プログラムに関しては、企業に対する最近のアンケート調査などを見ても、企業における利用が引き続き増加していくものと考えられる。
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